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6年生の最終授業にて…音楽の授業の究極の目的を信じて

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今日は、6年生の最後の音楽の授業でした。49人の子供達のほとんどが、泣き崩れながら音楽室を去っていきました。
 
 私は毎年、この時間には「旅立ちの日に」の合唱を通し、歌うことで今の自分の思いや願いを伝えることの素晴らしさ、そして、演奏者(児童)、聴衆(保護者・先生方)、作詞・作曲者の思いや願いが結ばれて、初めて歌に命が宿ることを話し、卒業への餞の言葉にしています。
 
 授業のはじめには、『「旅立ちの日に」の奇蹟』という、ドキュメンタリー番組のビデオを子供達と鑑賞します。そこで、歌の力で荒れた学校を立て直したかった作詞者の小嶋登校長先生の思いや願いを知り、同じく子供達の心を変えたこの歌を「一生の宝物です!」と笑顔で語る作曲者の坂本(現・髙橋)浩美先生の思いに触れます。
 続いて、過日行われた「卒業を祝う会」で涙を流して卒業を喜んでくれた、保護者の思いや、担任教師の思いに触れ、卒業式では聴者として、あなたたちの歌声に耳を傾けていることを話します。
 そして、そんな歌の作者である小嶋先生・坂本先生、聴者である保護者や担任の先生方の思いを知り、音楽に命を吹き込むための最後のファクターである、「演奏者」であるあなたたちは、どんな思いや願いをこの歌に込めて歌うかを問いかけ、黒板いっぱいに貼った拡大楽譜の上に、一人一人が思いや願いが綴られた付箋を貼り付けていきます。
 最後に、子供達の思いや願いの付箋でいっぱいになった拡大楽譜を見ながら、「旅立ちの日に」を歌い上げて、小学校6年間の音楽の授業の幕を閉じます。
 

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[最終授業で使用したプレゼン]

 

 1年生の入学式から見守り続けてきた子供達が、こうして立派に卒業していく姿を見るのは本当に感無量で、私も涙が止まりませんでした。まさにこれこそが、年度を超えて同じ児童と接することのできる専科教員の醍醐味であり、長年同一校で勤務してきたことに対するご褒美のようにも感じられました。
 小学校での音楽教育の究極の目的とは、たくさんの子供達が、音楽を通してこうした感動体験を共有すること、そして、それを糧に力強く生きていこうと決意する、まさに「生きる力」をつけて卒業していくことである、と私は信じて疑いません。7年間の現任校での数々の実践を通し、このように感動を素直に表現できる、優しくしなやかな心をもった子供達がたくさん育っていることを、今、とても嬉しく感じています。
 

次世代の音楽の授業を模索して⑤…タブレットを使った鑑賞「木星」の授業の創造その4

 

第2時 もとの「木星」の曲を知り、作曲者の考えを想像しよう

 
第2時は、「究極のメロディーM」の正体からせまっていきます。1つの曲だと思われていた究極のメロディーMは実は、オーケストラが演奏する「木星」という曲のほんの一部分で、イギリスのホルストさんという人が作曲した曲であること、「木星」は管弦楽組曲『惑星』の1曲であり、組曲の他の曲には「火星」「水星」など、太陽系の7つの惑星が音楽で表現されていること等を話し、ワークシートにまとめていきます。
 

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大型テレビに表示する「惑星」説明用のプレゼン

 
一通り「木星」の説明をし、曲についての理解を深めたところで、本題材の主活動である、「作曲者の意図を自由に想像し、木星の各主題を並べ替えてみよう」に入ります。「究極のメロディーM」をよりよく聴かせるためには、他の部分をどのように配置すればよいか、作曲者(ホルスト)の気持ちになって一人一人が考えてみます。
 
演奏順序を考えるにあたっては、Windowsタブレットを使用し、一人一台タブレットを活用して、それぞれの主題(ア〜カと名付けた7つ)を聴き、演奏順序を考えます。本当はiPadが全員分揃い、「ロイロノート」を使って主題のカードを自由に動かしたりつなげたりして考えられるのがベストなのですが、さすがにそれは無理でしたので、前時同様、一人一台使える利点を優先し、Windowsタブレットブラウザーを使い、自作htmlファイルによって、各主題を聴くだけで演奏順序を考えることにしました。
 

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作成したhtmlファイル…青い文字をタップするとその部分の音が聴こえてきます
 
前回同様、児童はそれぞれの主題の音源を聴きながら、ホルストさんが考えたであろう意図を自由に想像しながら、並び順を考え始めました。ただ、全くのゼロからだと想像することが難しい児童もいるので、こちらからは、演奏順序を考えるヒントとして、次の3つを提示しました。
 
・それぞれのカードの色の違いは何だろう。
・究極のメロデイーMが入るのは、はじめ?真ん中?と中?
・2つのカードをつないだ時→つながり方はおかしくないか?
 

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前回の活動同様、ヘッドフォンをして黙々と鑑賞活動をする子供達
 

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作成したワークシートの前半部分は、児童が書く部分を減らし、要点のみをおさえられるように配慮。また、後半の主題の並び方を考える部分には、なぜそのような並び順にしたのか、根拠を明確にするようにしました。

 
普段はにぎやかな子供達が、前回の活動同様、集中して真剣に鑑賞活動に取り組んでいるのには驚きました。誰一人として飽きてしまう児童もおらず、授業の最後まで、各主題を聴きながら並び順を考えていました。思考が思うようにできない児童は、「う〜ん、わかんないなぁ」など、言葉に発することが多く、他に音がないため把握しやすく、すぐに近寄ってアドバイスをかけることができました。
 
実際の児童の考えを見てみると、実に千差万別。正解を導き出した子供はこの段階では1〜2人でした。さあ、これをグループにして、考えを戦わせるとどうなるか
…いよいよ次の授業はクライマックス。次回に続きます。
 
 

1月より音楽室に導入のNewアイテム(?)

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1月の授業開始より音楽室に導入されたNewアイテムを御紹介。果たして授業での効果はいかに?? 

①まねっこチンアナゴ

これにはやられた。犬とか猫じゃなく、チンアナゴ…。これ考えた人は半端じゃない発想転換力…。

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何がすごいって…真似してしゃべる!!校歌も歌ってみました!!

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残念ながら、水族館のショップ限定商品。欲しい方は、仙台の「仙台うみの杜水族館」へ!!
<児童の反応>
どのクラスも、上手にマネをするチンアナゴに大笑い。チンアナゴ君に会いに休み時間に音楽室に来る子が続出…。人気がありすぎて、展示を一時休止中…orz...
 

②「心のレバー」

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TV番組「人生が変わる1分間の深イイ話」で使われている、出演者が操作するレバー。実物大なのでなかなかの迫力。

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これのすごいところは、レバーを操作すると「深イイ〜」「う〜ん…」と音が出るところ。しかーし!ただそれだけではなく、AVケーブルが付いていて、テレビにつなげるとこんなことまでできてしまう!

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<使い方と児童の反応>
私は、クラスのレパートリーソングの合格判定をする時などに使っています。
(私)「今の歌声は〜、、、これだ!!」
(テレビ)「深イイ〜!」(合格、の意味)
(児童)「やった〜!!」
 
おそらく、これが5千円もしたら、買っていなかったです。しかし、なんとこれは現在Amazonで最安¥1,350!
どういう使い方をするかは、教師の発想次第!!よろしければ、お急ぎください!!

 

液晶テレビ(!!)

本校の音楽室には、今まで2台の液晶テレビがあり、教材などを提示する際に使っていました。そ、それが…

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朝、学校に来たら3台(トリプル)になっていました…。
 
どうやら前日腹痛で学校をお休みした間に、校長先生が校内で余ったテレビを付けてくださったようです。(校長先生、ありがとうございます!!)
早速、HDMIスプリッタをつけて、両方同じ映像が映るようにしてみました。 

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<児童の反応>
「うわ〜3台だ。すごく見やすくなったね!!」
「小梨先生、お金持ち〜ぃ!!」
「…」
早速授業でガンガン活用中。おそらく、こんなハイテクな音楽室は、全国でココだけだと思われます…。
 
それにしても…これらのアイテム…。まぁ、いいか!授業は楽しくないといけませんね!!
 
 
 

初等教育資料1月号に実践事例が掲載されました

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昨日発売された文部科学省の月刊誌『初等教育資料』1月号の特集の中に、9月に行った器楽の授業実践の内容を掲載していただきました。「茶色の小びん」を教材に、器楽の授業でいかに高まった子供の姿を見据えた、深い学びのある授業を展開するか、悪戦苦闘した様子を4ページにわたり事例として御報告させて頂いております。また、今回の1月号は、次期学習指導要領を見据えた、津田正之教科調査官の論説や各分野ごとの実践報告、研究や実践を積まれてきた先生方の座談会レポートなど、音楽科の特集が組まれています。御興味のある方はぜひ御一読ください。

 

次世代の音楽の授業を模索して④…タブレットを使った鑑賞「木星」の授業の創造その3

10月から先週にかけて、校内音楽会に向けた準備等でず~っと時間がなく、なかなか更新できませんでした…。
(今年の校内音楽会の様子は別にお話ししたいと思います。)
 
木星」実践の続きです。
今回は実際に行った「木星」の授業についてお話ししたいと思います。
まず、題材の大きな流れとして、次のような内容で3時間扱いとしました。
 
<第1時>
木星の中間部(究極のメロディーM)の色々なアレンジの演奏を聴き、自分の心に一番心に響く演奏を探す。
②同じ演奏を選んだ者同士で、選んだ演奏の良さについて話し合い、学級で良さを共有する。
Windowsタブレット25台&作成htmlページ)
 
<第2時>
①究極のメロディーMが「木星」というオーケストラの楽曲の一部であることを知る。
②原曲で、どの位置に各主題が配置されれば、究極のメロディーMを際だたせることができるか演奏順序を個人で考え、ホルストの意図にせまる。
Windowsタブレット25台&作成htmlページ)
 
<第3時>
①「木星」の各主題の演奏順序を、個人の考えを元に、グループで話し合いながら再構成してみる。
②原曲を聴き、ホルストの意図(三部形式、Mは中間部…等)を知る。
ホルストの思いや意図に触れて感じたこと、考えたことを個人でまとめる。
iPad6台&「ロイロノート」)
 

第1時「究極のメロディーM」のいろいろな演奏を聴こう

 
まずはじめに、「究極のメロデイーM」の楽譜を大型テレビに映し、教師がテナーリコーダーで演奏しました。演奏した後、温かい拍手(…こういうところが本校の児童の可愛いところです)児童からは、「これ聴いたことある!」や「知らないなぁ〜」など様々な反応。たくさんのミュージシャンがこのメロディーの魅力に惹かれ、演奏していることを紹介し、今日はそんないろいろな「究極のメロディーM」の演奏から、自分の心に一番響いたのはどれかを考えてもらうと話しました。
そして、いよいよタブレットの登場です。前々回でご紹介した、いろいろな演奏が聴ける木星のhtmlページを立ち上げ、子どもたちは、持参したヘッドフォンを装着し、自分のペースで用意した8曲の「木星」の演奏を聴いていきます。
 
ちなみに、用意した8曲の演奏は以下のとおりです。
 
①女声の独唱(平原綾香
②ピアノ2重奏
④パイプオルガン
金管アンサンブル
⑥オルゴール
⑧ポップバイオリン(葉加瀬太郎
 
8曲それぞれについて感じたことをワークシートにメモし、自分の心に響いた順に◎◯△をつけていきます。
(音楽室はシ〜ン、としていますが、みんな音楽活動しています。)

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自分の心に一番響いた演奏◎を選んだら、なぜそう思ったのか、「音楽の素」をたよりに考えてみます。
(例:温かい感じがした…関連する音楽の素→音色、発音など)

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↓同じ演奏を選んだ者同士が集まり、良さについて意見を共有します。
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本当は次に、一緒になったグループから、自分たちの選んだ演奏の良さについてコマーシャルをしてもらうつもりだったのですが、時間切れでいくつかのグループに良さを発表してもらうだけで終わりになってしまいました。この部分の活動だけを膨らませても、十分面白いとは思います。
 
次回は「木星」第2時、第3時の授業の様子です。
(教育音楽12月号に続きが掲載されていますのでよろしければ御覧ください)

教育音楽小学版12月号「ICT実践特集」発売

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以前御紹介しましたが、9月に教育音楽小学版の編集部の方が本校にお見えになり、ICTの実践についての取材を受けました。その時お話したことが、11月18日発売の12月号に掲載されております。

ICT機器を効果的に活用すると、もっともっと音楽の授業は素敵になる筈なのに、様々な理由からなかなか進まない現状があります。

アクティブラーニング、授業のユニバーサルデザイン化など、これからの学校教育のキーワードを語る上で、ICT機器の活用は共通したトリガーであり、音楽科でも積極的な活用が求められていきます。

私や他のお二人の実践が、少しでも音楽の先生方のICT機器活用の参考となれば幸いです。

(記事の中の、タブレットを活用した「木星」の鑑賞の授業実践については、本ブログでも連載で御紹介しています。) 

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日本音楽教育学会で学ぶ

ここ2〜3年自分がやってきていることの中で、「実践をどのようにまとめ、広く伝えられるものにするか」は大きな課題の一つです。自分は大学時代、卒業時に書いたのは「卒業論文」ではなく、吹奏楽曲を作曲する、という「卒業演奏」でしたので、「論文」をまともに書いたことがありません。しかし、実践をまとめるたびに論文の書くテクニックを知る必要性を感じており、音楽教育に関わる論文の書き方を学ぶ、また、他の音楽教育に関わる諸実践からさらに多くの学びを得るために、「日本音楽教育学会」に入会し、研鑽することにしました。10/8から二日間、その全国大会が横浜国立大学で行われましたので、参加してきました。
 
 横浜駅からバスで15分位で横浜国大に到着。キャンパスは山の上にありました。

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今年の学会のテーマは「ミュージキング:原点からの音楽教育」というもの。各地の音楽教育研究者たちの研究発表が100近くあり、参加者は自分の興味のある研究発表を渡り歩き聴いていきます。また、音楽教育関連の大学院の院生たちによる研究フォーラムがあり、熱心に自分の研究の成果を発表していました。
ちなみに、私が聴いた研究発表のテーマは次のとおりです。
 
①音楽科教育における二項対立的問題についての考察
②小学校音楽科への知識構成型ジグソー法の導入
③小学校6年間を通した日本音楽の学習
④アクティブ・ラーニングによる身体的表現活動の試み
変声期男子が快適に歌える合唱指導法と教材開発に関する研究
 

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基調講演はニューヨーク大学のディビットエリオット教授による「プロフェッショナルな音楽教育者であること」、記念演奏は鼓楽三番叟でした。
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残念ながら、2日間ある学会のうち1日目しか参加できなかったのですが、音楽教育をしっかりアカデミックにとらえているそれぞれの研究発表は、同じように実践研究を行っている私にとって、とてもエキサイティングなものでした。確かに、発表の中には机上の空論的なものや、「はぁ?何いってんの??」的なものもありましたが、発表しようという気持ちだけでも立派ですし、音楽教育に対して情熱をもって取り組んでいることは十分賞賛に値すると感じました。
ただ、気になったのは、会場にいるのは明らかに大学の先生らしき人と学生さんばかりで、学校現場の教師らしき人の姿があまり見られなかったことです。現場の生の声を伝えていくことは、このような研究団体にとって、机上の空論に陥らないためにもとても重要なのではないかと思います。明日の音楽教育を支える若い学生さん達のためにも、もっともっと先生方はこのような会に足を運び、現場の様子を伝えるべきだな、と感じました。